梅雨入り前の初夏、少しずつ日差しが強まり、風の温かさが夏の気配を感じさせます。京都御所の紫宸殿と清涼殿では、この時期、壁代《かべしろ》の撤去や御帳台《みちょうだい》の帷《とばり》などを夏の装いに替える「更衣《ころもがえ》」が行われます。

更衣前の御帳台

更衣は、平安時代から宮中の年中行事として、旧暦の４月１日と１０月１日に季節に応じて衣服、および室内の調度や敷物をかえるもので、新しい季節の到来を告げる風物詩でもありました。現在一般に行われている年二期の衣服の更衣も、宮中の行事が民間に普及したものといわれています。

江戸時代末期の宮廷で行なわれていた儀式や行事を本文と附図によって記録した旧儀式図画帳（東京国立博物館所蔵）には、旧暦４月の更衣の様子が画かれています。

清涼殿の更衣の様子

紫宸殿の更衣の様子

これを期に天皇の御衣についても夏用に取り替えられました。

今年の清涼殿の更衣は５月１３日（火）に行いました。

帷の文様も紫色の朽木形《くちきがた》から夏らしい白色の葦《あし》と鶴の文様へと替わり、帷が緩やかな風に揺れる様は、見た目にも涼しく、心地よい夏の室礼《しつらい》となっています。

清涼殿の夏姿は、通常の参観でもご覧いただけます（建物の外から）。御帳台をはじめ、障壁画や屏風、御簾《みす》、几帳などが織りなす、平安絵巻のような雅やかな空間を、ぜひ現地でご鑑賞ください。

夏を迎える室礼 - 清涼殿の更衣

資料を見る